- 終活のプロになりたい人が読んでおきたい本は?
- 終活の資格を取る際に参考になる本は?
- 終活のプロはどのようにして収入を得ているのか?
今回は、このような疑問を持っている人向けに、「終活スペシャリストになろう」という本を紹介します。この本は、幻冬舎から2021年4月に発行されました。
この本を取り上げる理由は、終活のプロになるために「どのような知識を身につけるべきか」「どのようにして収入を得るのか」「スクール選びの基準は何か」などが解説されているためです。
著者について
竹内氏は一般社団法人 終活協議会 代表理事を務めています。終活協議会は、終活の資格である「終活ガイド」の認定団体です。
竹内氏は2011年の東日本大震災をきっかけに独立し、以後終活の専門家として活躍しています。竹内氏は全国から寄せられる終活相談に対応しているうちに「終活スペシャリスト」を増やすことを決意しました。
それが資格制度(終活ガイド)の創設に携わることにつながりました。
誰に向けた本なのか
「終活スペシャリストになろう」は、これから終活の専門家として活躍していきたい人に向けて書かれた本です。
この本では、終活のスペシャリストがきちんと収入を持てる仕事であることを明らかにしています。さらに、終活のスペシャリストが各地域で「終活について身近に頼れる人」として働くことで、生きがい・やりがいを持てる仕事であることも強調しています。
「終活スペシャリストになろう」の概要
終活スペシャリストとは
終活スペシャリストの需要が高まっている背景
竹内氏はまず、時代の流れで日本では高齢者が増加していることに触れ、高齢者が抱える問題は「お金」と「人間関係」であると説きます。
前者は老後資金に関するものであり、後者は「おひとり様世帯増加」に関するものです。このことが終活のお手伝いをするプロである「終活スペシャリスト」の需要の高まりにつながっています。
竹内氏は、終活準備不足からトラブルになった実例を10項目挙げて、それぞれを解説しています。
- 父親に延命治療の希望を聞いておけばよかった
- 介護認定を受けるメリットを伝えておけばよかった
- 父親が入っている保険を確認しておけばよかった
- 相続財産の確認をしておけばよかった
- 直葬の流れを調べておけばよかった
- 夫が生きているうちにお墓を買っておけばよかった
- 父親の生前に銀行口座を聞いておけばよかった
- もっと早く実家の片付けを手伝っておけばよかった
- 必要な老後資金を早めに試算しておけばよかった
- 母親のために介護離職をしなければよかった
竹内氏は、どのケースもきちんと終活準備しておけば防げるケースと述べています。そして、それぞれのケースについてトラブル防止策を示しています。
一つの防止策例を見てみましょう。例えば上記2(介護認定を受けるメリットを伝えておけばよかった)に関して、竹内氏は以下のように述べています。
そもそも介護認定を受けるとどんなメリットがあるかも知らず、「介護認定=『ボケ』を認めること」だと思い込んで怖がる方も多いので、認定されると具体的にどんなサービスを受けられるのか、下世話にいえば「どんなおトクなことがあるのか」を分かりやすく本人に話し、親御さんの気持ちも変えることをお勧めしています。
幻冬舎 終活スペシャリストになろう 竹内義彦 2021年 p31-32
ここで「終活の範囲は広いし、自分でトラブルを解決するのは無理」と感じた人もいるかもしれません。それに対する竹内氏の答えは明快です。
終活スペシャリストがしゃかりきになってなんとかしようとするよりは、それぞれの領域の専門家に任せたほうが良い結果になることが多いのです。相談をうかがって、「この問題は相続関連だから、税理士さんの専門領域だな」と判断できるぐらいの知識知識があれば十分です。あとは税理士や弁護士を紹介してあげればよいのです。
幻冬舎 終活スペシャリストになろう 竹内義彦 2021年 p55
「困ったときにまず相談する人」が終活スペシャリスト
竹内氏は、終活スペシャリストを「困ったときにまず相談したくなる人」と捉えています。何か困ったことが起こったとき、いきなり弁護士に相談するのではなく、まずは終活スペシャリストに相談するほうが「相談者も安心できる」としています。
終活スペシャリストの先には、弁護士などの専門家ネットワークがあり、都度適切な専門家につなぐことが求められます。
終活スペシャリストになるためには
終活スペシャリストとして知っておきたい6つの基本ジャンル
竹内氏は、終活スペシャリストとして知っておきたい基本ジャンルは、以下6項目であると言います。
医療、介護、保険、相続、葬儀、お墓
それぞれの項目で考慮すべきポイントを解説しています。
- 医療:「最後をどこで迎えたいか」「延命治療を望むか」「医療情報サービス会社の活用」
- 介護:「介護保険の仕組み」「介護保険サービス認定と内容」「高齢者施設」「認知症」
- 保険:「公的保険」「高額医療費制度」「年金保険」「私的保険」「保険の見直し」
- 相続:「相続分」「遺言」「相続税」
- 葬儀:「葬儀費用トラブル」「直葬」
- お墓:「お墓と埋葬の種類」
どれも発生すると本人にも家族にも非常に切実な問題になります。それら課題を「終活のプロが相談者にアドバイスする観点で」分かりやすく簡潔に記載しています。
例えば保険に関しては、以下の内容が記載されています。
- 公的保険で特筆すべきは、「健康保険の高額医療費制度」。しかしこの制度でも年収によっては1ヶ月に5万以上の医療費を払うことも。その場合は民間の保険を組み合わせて利用すると良い
- 国民年金は老後の年金になるだけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金として支払われる場合がある。国民年金は、実は老齢・障害・死亡のリスクに備える「お得な保険」である
- 自分が入っている民間保険の保障内容をきちんと理解しておく。特定の年齢になってから保障内容が変わることがある。
- 保険の見直しの際は、保険会社の営業マンの言うことを鵜吞みにせず、自分で計算して損得を確認する
- 死亡保険に付帯できるものに「リビングニーズ」特約がある。被保険者が余命6ヶ月と判断されると保険金の前払いを受けられる。医療費補助やしたいことに充てられる。
終活スペシャリストとしてこのような知識を持っておくと、相談者に対して有益なアドバイスができるでしょう。
エンディングノートの必要性
竹内氏は「エンディングノート」の必要性についても述べています。
終活にまつわる問題の多くは、生前もしくは認知症になる前の、意識がしっかりしているときに「本人はどうしたいのか」を伝えてもらっていれば、周囲の人が迷ったり困ったりすることを回避できるものです。
幻冬舎 終活スペシャリストになろう 竹内義彦 2021年 p102
しかしながら、エンディングノートを書こうとした人の多くが挫折したと竹内氏は指摘しています。そこで竹内氏は、エンディングノートを書き始める前に目次を見て、「ここは書けそうだな」と思うところから書くことを推奨しています。
資格スクール選びが大事
竹内氏は、資格取得には「スクール選び」が重要と説きます。その際のポイントは「仕事に結びつくスクールを選ぶこと」「バックアップ体制がしっかりしているかに着目してスクール選びをすること」と言い切ります。
バックアップ体制は、「一緒に終活の悩みを解決する仕事をする仲間を増やす」ことで実現します。それを行っているのが終活協議会です。
終活スペシャリストとして働くということ
町の終活先生になる
竹内氏は、終活の資格を取ったら、「自分は終活のプロです」と名乗り、町の終活の先生になりましょうとアドバイスしています。そして、終活ガイド資格を例にとり、終活協議会のバックアップを得ながら得られる収入の仕組みを解説しています。
終活ガイドの収入例
竹内氏は、終活ガイドが収入を得る方法として、以下の例を挙げています。
一人暮らしの高齢者が亡くなった場合
- 終活ガイドは遺族の了承を得たうえで、終活協議会に「遺品整理業務が発生したので、業者を紹介してほしい」と連絡
- 終活協議会は業務提携している遺品整理業者に連絡。業者は遺品整理を行う
- 遺族が遺品整理業者に費用を支払う
- 遺品整理業者は紹介料として一部を終活協議会に支払う
- 終活協議会は紹介料の一部を終活ガイドに支払う
これが「終活協議会のバックアップを得て終活ガイドが収入を得る仕組み」の例です。
竹内氏は、以下のように述べています。
このように終活協議会が間に入ることで終活ガイドの方々が収入を得られる仕組みをたくさん用意しています。
幻冬舎 終活スペシャリストになろう 竹内義彦 2021年 p118
竹内氏は、終活ガイドには1級、2級、3級の3種類があり、どれを取得しても活動は可能としています。中でも終活ガイド1級ではさらに深い知識を学べて、1級資格者は終活ガイド(2級)検定を開催できると述べています。
終活ガイド(2級)検定とは
終活ガイド(2級)検定は、終活ガイド2級を取得したい人向けの講座です。レベルは「エンディングノートを書くために必要な知識を得られるくらい」です。
終活ガイド2級を取得するには、受講料5,000円を払い、医療や介護など7項目に関する3時間の検定講座を受講し、直後に実施される試験(選択式)に合格する必要があります。受講はオンライン、または全国の会場で実施されています。
この検定講座の講師として活躍できる人が「終活ガイド1級資格者」です。検定講座の受講料の一部は講師の収入になります。
終活ガイドの体験談
この本では、実際に終活ガイドの資格を取得して、仕事やライフワークに結びつけた活動を行っている9名の体験談を載せています。
体験談を語る方々のバックグラウンドは異なるものの、何らかの形で高齢者と関わりを持っていたり、充実したシニアライフに関心のある方ばかりです。
それぞれの体験談をまとめると、下記のように要約できます。
- 以前の経験で、終活の必要性を強く認識している
- 終活ガイド講座の受講や取得後の活動に非常に満足している
- 同じ終活ガイドの人たちとの横のつながりに価値を感じている
終活協議会による本の紹介ビデオ
一般社団法人 終活協議会は、「終活スペシャリストになろう」の一部をビデオで分かりやすく紹介しています。こちらもぜひ参照してみてください。
まとめ
以上、「終活スペシャリストになろう」の内容を見てきました。
これから終活のプロを名乗って活動したい人にはとても参考になる本です。この本を参考に、今後終活のプロとしてどのように活躍していくのかの青写真を描くと良いでしょう。
コメント